◆ 2010年1月 6日
生物多様性を「心」と解く

地球環境問題の鍵である「生物多様性」は、人間の「心」の部分にあたると思います。
話は2004年に遡ります。当時、社会貢献推進室に所属していた私は「社内起業研究会」というものを立ち上げて、集まった社員20名弱の人たちと共に「NPOを作ろう!」と盛り上がっていました。
日本ではその頃まで(今でもそうした傾向はありますが)NPOとの協働というと、助成金支援という形がほとんどでした。リコーも会社として、あるいは社員が立ち上げた草の根支援団体「社会貢献クラブ・FreeWill」を通じて、さまざまなボランティア団体・NPOに助成金支援を行なっていました。社内起業研究会では、この企業とNPOの関係を一歩推し進め、"これからの協働"の形を模索していたのです。
具体的には、企業がNPOに活動資金を提供して「おしまい」ではなく、企業の真の財産である、ヒト・情報・モノ・技術(=サービスグラントと言います)を提供することを通じて「一方通行の資金提供」から「活動の交流」へ。NPOから活動の報告を聞くだけではなく、社員が活動に参加し、達成感、健康、スキル向上、貢献の実感、元気、ネットワーク作りなど、さまざまな有形・無形の力を得る道こそ、真の協働ではないか?と考えたのです。
社員の派遣、環境教育の実施、居場所(拠点)づくり、福祉機器の提供など、リコーが得意とする技術や社員の力を活用するアイデアがたくさん集まりました。私が提案したのは「ボランティアコネクション」という仕組みで、社員がそれぞれ得意なことを登録し、そのスキル・ノウハウを必要とするNPOの活動にボランティアとして参加するというものでした。ITを活用すれば、バラエティに富んだ一人ひとりの知識や技術と、それを必要とするNPOをコーディネートすることが可能だと考えたからです。
いくつかの提案を選んで、学校の先生やNPOの職員など社外の方々を招き、実際のニーズや実現の可能性を討論しました。その結果、社内起業研究会の考える活動は
・より良い社会に貢献することを目的とした、非営利な活動
・非営利の活動を行うにも資金が必要
・非営利活動のための資金を調達するには「共感」を得ることが大切
であることを学びました。そして、ここでハタと気が付いたのは、私たちが余りにも馴れ親しんでいる企業の経済活動においては、お金に換算できないもの、たとえば"人の心"は、そもそも経済活動のファクターとして考慮されていないということでした。目的を達成するために必要な"人数"は計算すれど、その人数を構成する個々人の"心の在り方"は不問。これで本当に良いのでしょうか。生き生きと活動できれば、生産性が上がります。逆に心の状態が悪いと、今に集中できず、次につながりません。
「社員の元気をお金に換算する方法(="元気"を経済活動に組み込む方法)」って、ないんだろうか?
5年経った今も考え続けていますが、人数に時間をかけて労働力をお金に換算する方法はあっても、心の状態を経済効果として測るモノサシは見つかりません。
ちなみに数年後、ニュースで次のような記事を見つけたことがあります。
"80年代に国家的破綻に直面していた米国を再生させ、国際競争力を世界一に押し上げたデミンググループは、80年代の終わりに個人の業績は測れないという結論に達した"
デミング博士はじめ、デミンググループの指導者の多くは統計学者です。つまり、測るという事の専門家。その人達が、ものごとの成果の80%は「皆がかかわり合った結果」であって、独立した個々の人間の成果として判別できるのはごく一部であるという結論に達したという報道です。どうやら"心を測ろう"などと考えたこと自体、無理があったようです。
そうこうする内、私は社会環境本部へ異動し、生物多様性を担当することになりましたが、ここでも「生物多様性を数値化する」という難題が待っていました。二酸化炭素や化学物質は数値にできても、生物多様性を測る決定的なモノサシは存在しません(その生態系に存在する動植物の個体数や成育をみることが多いです)。人体の各部について数値に現せても、心・気持ちを現せないことに似ていると思います。つまり、地球は「それぞれの生態系がかかわり合った結果」であって、一部の生態系に優劣があるわけではないということでしょう。
地球環境の再生を目指すにあたり、数字の大小で重点分野を決めたり、数字を高くして良くなったと表現することには未だに違和感があります。どんな人の心も大切な個であるのと同じように、生態系は、どんなに小さいものも優劣なく同じように大切なはずです。そのことをしっかり感じた上で、自分が何をするか、リコーが企業として何に取り組むか、数値化を否定するのではなく活用して、今やるべきことを選択していくのが、今の私にできることだと思っています。
ところで、冒頭でご紹介した社内起業研究会では、残念ながらNPO設立という当初の目標は達成できませんでした。幻となった企画の中には、今でもグッと来るものがあります。いつか絶妙なタイミングで、思いを持った社員がそれを形にする日が来るのだと信じています。
これからも心を豊かにする努力を惜しまず、生物多様性について真面目に考えることで社員の皆さんのお役に立ちたいと考えています。今年もどうぞよろしくお願いします。
話は2004年に遡ります。当時、社会貢献推進室に所属していた私は「社内起業研究会」というものを立ち上げて、集まった社員20名弱の人たちと共に「NPOを作ろう!」と盛り上がっていました。
日本ではその頃まで(今でもそうした傾向はありますが)NPOとの協働というと、助成金支援という形がほとんどでした。リコーも会社として、あるいは社員が立ち上げた草の根支援団体「社会貢献クラブ・FreeWill」を通じて、さまざまなボランティア団体・NPOに助成金支援を行なっていました。社内起業研究会では、この企業とNPOの関係を一歩推し進め、"これからの協働"の形を模索していたのです。
具体的には、企業がNPOに活動資金を提供して「おしまい」ではなく、企業の真の財産である、ヒト・情報・モノ・技術(=サービスグラントと言います)を提供することを通じて「一方通行の資金提供」から「活動の交流」へ。NPOから活動の報告を聞くだけではなく、社員が活動に参加し、達成感、健康、スキル向上、貢献の実感、元気、ネットワーク作りなど、さまざまな有形・無形の力を得る道こそ、真の協働ではないか?と考えたのです。
社員の派遣、環境教育の実施、居場所(拠点)づくり、福祉機器の提供など、リコーが得意とする技術や社員の力を活用するアイデアがたくさん集まりました。私が提案したのは「ボランティアコネクション」という仕組みで、社員がそれぞれ得意なことを登録し、そのスキル・ノウハウを必要とするNPOの活動にボランティアとして参加するというものでした。ITを活用すれば、バラエティに富んだ一人ひとりの知識や技術と、それを必要とするNPOをコーディネートすることが可能だと考えたからです。
いくつかの提案を選んで、学校の先生やNPOの職員など社外の方々を招き、実際のニーズや実現の可能性を討論しました。その結果、社内起業研究会の考える活動は
・より良い社会に貢献することを目的とした、非営利な活動
・非営利の活動を行うにも資金が必要
・非営利活動のための資金を調達するには「共感」を得ることが大切
であることを学びました。そして、ここでハタと気が付いたのは、私たちが余りにも馴れ親しんでいる企業の経済活動においては、お金に換算できないもの、たとえば"人の心"は、そもそも経済活動のファクターとして考慮されていないということでした。目的を達成するために必要な"人数"は計算すれど、その人数を構成する個々人の"心の在り方"は不問。これで本当に良いのでしょうか。生き生きと活動できれば、生産性が上がります。逆に心の状態が悪いと、今に集中できず、次につながりません。
「社員の元気をお金に換算する方法(="元気"を経済活動に組み込む方法)」って、ないんだろうか?
5年経った今も考え続けていますが、人数に時間をかけて労働力をお金に換算する方法はあっても、心の状態を経済効果として測るモノサシは見つかりません。
ちなみに数年後、ニュースで次のような記事を見つけたことがあります。
"80年代に国家的破綻に直面していた米国を再生させ、国際競争力を世界一に押し上げたデミンググループは、80年代の終わりに個人の業績は測れないという結論に達した"
デミング博士はじめ、デミンググループの指導者の多くは統計学者です。つまり、測るという事の専門家。その人達が、ものごとの成果の80%は「皆がかかわり合った結果」であって、独立した個々の人間の成果として判別できるのはごく一部であるという結論に達したという報道です。どうやら"心を測ろう"などと考えたこと自体、無理があったようです。
そうこうする内、私は社会環境本部へ異動し、生物多様性を担当することになりましたが、ここでも「生物多様性を数値化する」という難題が待っていました。二酸化炭素や化学物質は数値にできても、生物多様性を測る決定的なモノサシは存在しません(その生態系に存在する動植物の個体数や成育をみることが多いです)。人体の各部について数値に現せても、心・気持ちを現せないことに似ていると思います。つまり、地球は「それぞれの生態系がかかわり合った結果」であって、一部の生態系に優劣があるわけではないということでしょう。
地球環境の再生を目指すにあたり、数字の大小で重点分野を決めたり、数字を高くして良くなったと表現することには未だに違和感があります。どんな人の心も大切な個であるのと同じように、生態系は、どんなに小さいものも優劣なく同じように大切なはずです。そのことをしっかり感じた上で、自分が何をするか、リコーが企業として何に取り組むか、数値化を否定するのではなく活用して、今やるべきことを選択していくのが、今の私にできることだと思っています。
ところで、冒頭でご紹介した社内起業研究会では、残念ながらNPO設立という当初の目標は達成できませんでした。幻となった企画の中には、今でもグッと来るものがあります。いつか絶妙なタイミングで、思いを持った社員がそれを形にする日が来るのだと信じています。
これからも心を豊かにする努力を惜しまず、生物多様性について真面目に考えることで社員の皆さんのお役に立ちたいと考えています。今年もどうぞよろしくお願いします。
