◆ 2010年1月14日
欧州紀行 008『クルマを見ない日』

世界中でクルマが溢れている。日本にいても欧州にいても違わないのは、そこかしこをクルマが走り廻っているということである。クルマが走るための道路が世界中に張り巡らされているのだから、当然といえば当然のことなのだが。
ベルギーでもイギリスでも、都心にはところ狭しとクルマが駐車されており、市民生活になくてはならない存在であることがわかる。
欧州に住んでいると、クルマってなんて便利なんだろう!と実感することが多々ある。まずインフラ面において、欧州内の高速道路は多くの人が移動するであろう主要都市、観光スポットをくまなく網羅しており、基本的に無料な上、広々とした片道三車線の道路も多く、時間通りに移動する手段として、こんなに便利なものはないと感じる。加えてクルマで移動する場所には駐車スペースが多く割かれており、駐車場探しで困った経験もあまりない。
蛇足ではあるが、長距離移動時にカーナビが告げる予想到着時間を確認し、この予想よりも早く着いてやろう(もちろん安全運転の範囲で!)と、意気込んで運転することがある。ところが、どうあがいてもカーナビに操られてでもいるかのように、予想時間通りに着いてしまう。もちろん長距離の道程では途中に工事や事故があったりもするのだが、そのあと交通の流れが速くなるのか?最終的には結局、予想通りになってしまうのだ。
とはいえ、便利便利とクルマを使う機会をいたずらに増やすと、ガソリン消費が増え、エネルギー的にもCO2的にも、地球環境への影響が計り知れない。
また欧州ではちょっと都心から離れて郊外に出ると、そこかしこに中世を彷彿とさせる景観が残っているが、こうした200年前に造られた建物、石畳の道、古城が佇む景観の中では、クルマは明らかに場違いな物体である。ベンツだろうとポルシェだろうと、古城を前にした石畳の道には似つかわしくないのだ。今や環境に配慮されたクルマは色々あるが、"景観に配慮したクルマ"というものには出遭ったことがない。
景観とクルマ?そんなこと気にするのはあなただけでは?との声も聞こえそうだが、実はこちらには「クルマを見ない日」=「カーフリーデー」というイベント... というか、お祭りのような日がある。1997年にフランスの地方都市ラ・ロッシェルで始まった社会実験「車のない日」が発端となり、2000年からはEU全体の取り組み「Mobility Week」として、毎年9月に実施されている。
2009年は9月16日〜22日がMobility Weekで、多くの都市では20日の日曜日が"クルマに乗ってはいけない日"に定められた。ここブリュッセルでは「ノーカーデー」と呼ばれ、街からクルマが一掃された。主要道路は封鎖され、騎馬警官が見廻る中、もし間違ってクルマを動かそうものなら罰金の切符を切られてしまう。その代わり、地下鉄やバス(20km/h以下で走る)、トラムは終日無料となり、街の中心部ではコンサートや美術館が無料になったりと、大したイベントになっている(こちらに赴任してきたばかりの頃は、券売機の電源が落ちている地下鉄の駅で「切符が買えない!」と駅員に文句を言って、恥ずかしい思いをした)。
街に目をやると「ここは北京か?」と見間違うばかりに、みな自転車に乗っている。ベルギーでは、普段あまり自転車に乗っている人を見ないので、これは無料の貸自転車でもあるに違いないと踏んだのだが、そんなものはなく、聞くと自宅から乗ってきたという。持ってるんなら普段から乗ればいいのに?と言いたくなる。
この日の為に秘蔵している(?)自転車を駆り、ビールを飲んで、大いに盛り上がる。クルマを使わず楽しもうという、国をあげての一大イベントなのだ。
国民一人ひとりにそもそもの趣旨がきちんと理解されているのか?ということは別にして、クルマのない日が十分に市民に受容れられているのは喜ばしいことである。眉間に皺をよせ地球環境保全を!と叫ぶだけでなく(もちろんそれも必要なのだが)、皆で楽しみながら環境負荷削減に取り組むことができるアイデアは、他にもあるのではないかと考えさせられた。
追記(2010年2月2日)
『景観に配慮したクルマ"というものには出遭ったことがない』と書きましたが、イギリスにありました!
ハックニー・キャリッジ、通称"ブラック・キャブ"と呼ばれる、イギリスの正式なタクシー。これは明らかに景観に配慮してデザインされていて、EUの厳格な各種環境規制に対応した最新型でも、依然どこかクラシカルな趣を残すことで、古い建築物の前に止まっていても決して景観を損なうことがありません。優れたクルマだと思います。...乗り心地は決して良くありませんが(笑)。
羽田野洋充
リコーヨーロッパ CSR(環境マネジメント)担当
ベルギーの首都ブリュッセルを拠点に、EU製品環境規制についての情報収集及び ロビー活動に従事。
2006年より、家族4人でベルギーに駐在中。
ベルギーでもイギリスでも、都心にはところ狭しとクルマが駐車されており、市民生活になくてはならない存在であることがわかる。
欧州に住んでいると、クルマってなんて便利なんだろう!と実感することが多々ある。まずインフラ面において、欧州内の高速道路は多くの人が移動するであろう主要都市、観光スポットをくまなく網羅しており、基本的に無料な上、広々とした片道三車線の道路も多く、時間通りに移動する手段として、こんなに便利なものはないと感じる。加えてクルマで移動する場所には駐車スペースが多く割かれており、駐車場探しで困った経験もあまりない。
蛇足ではあるが、長距離移動時にカーナビが告げる予想到着時間を確認し、この予想よりも早く着いてやろう(もちろん安全運転の範囲で!)と、意気込んで運転することがある。ところが、どうあがいてもカーナビに操られてでもいるかのように、予想時間通りに着いてしまう。もちろん長距離の道程では途中に工事や事故があったりもするのだが、そのあと交通の流れが速くなるのか?最終的には結局、予想通りになってしまうのだ。
とはいえ、便利便利とクルマを使う機会をいたずらに増やすと、ガソリン消費が増え、エネルギー的にもCO2的にも、地球環境への影響が計り知れない。
また欧州ではちょっと都心から離れて郊外に出ると、そこかしこに中世を彷彿とさせる景観が残っているが、こうした200年前に造られた建物、石畳の道、古城が佇む景観の中では、クルマは明らかに場違いな物体である。ベンツだろうとポルシェだろうと、古城を前にした石畳の道には似つかわしくないのだ。今や環境に配慮されたクルマは色々あるが、"景観に配慮したクルマ"というものには出遭ったことがない。
景観とクルマ?そんなこと気にするのはあなただけでは?との声も聞こえそうだが、実はこちらには「クルマを見ない日」=「カーフリーデー」というイベント... というか、お祭りのような日がある。1997年にフランスの地方都市ラ・ロッシェルで始まった社会実験「車のない日」が発端となり、2000年からはEU全体の取り組み「Mobility Week」として、毎年9月に実施されている。
2009年は9月16日〜22日がMobility Weekで、多くの都市では20日の日曜日が"クルマに乗ってはいけない日"に定められた。ここブリュッセルでは「ノーカーデー」と呼ばれ、街からクルマが一掃された。主要道路は封鎖され、騎馬警官が見廻る中、もし間違ってクルマを動かそうものなら罰金の切符を切られてしまう。その代わり、地下鉄やバス(20km/h以下で走る)、トラムは終日無料となり、街の中心部ではコンサートや美術館が無料になったりと、大したイベントになっている(こちらに赴任してきたばかりの頃は、券売機の電源が落ちている地下鉄の駅で「切符が買えない!」と駅員に文句を言って、恥ずかしい思いをした)。
街に目をやると「ここは北京か?」と見間違うばかりに、みな自転車に乗っている。ベルギーでは、普段あまり自転車に乗っている人を見ないので、これは無料の貸自転車でもあるに違いないと踏んだのだが、そんなものはなく、聞くと自宅から乗ってきたという。持ってるんなら普段から乗ればいいのに?と言いたくなる。
この日の為に秘蔵している(?)自転車を駆り、ビールを飲んで、大いに盛り上がる。クルマを使わず楽しもうという、国をあげての一大イベントなのだ。
国民一人ひとりにそもそもの趣旨がきちんと理解されているのか?ということは別にして、クルマのない日が十分に市民に受容れられているのは喜ばしいことである。眉間に皺をよせ地球環境保全を!と叫ぶだけでなく(もちろんそれも必要なのだが)、皆で楽しみながら環境負荷削減に取り組むことができるアイデアは、他にもあるのではないかと考えさせられた。
追記(2010年2月2日)『景観に配慮したクルマ"というものには出遭ったことがない』と書きましたが、イギリスにありました!
ハックニー・キャリッジ、通称"ブラック・キャブ"と呼ばれる、イギリスの正式なタクシー。これは明らかに景観に配慮してデザインされていて、EUの厳格な各種環境規制に対応した最新型でも、依然どこかクラシカルな趣を残すことで、古い建築物の前に止まっていても決して景観を損なうことがありません。優れたクルマだと思います。...乗り心地は決して良くありませんが(笑)。
羽田野洋充リコーヨーロッパ CSR(環境マネジメント)担当
ベルギーの首都ブリュッセルを拠点に、EU製品環境規制についての情報収集及び ロビー活動に従事。
2006年より、家族4人でベルギーに駐在中。
